どんなことでも続けることに意味がある

本格志向のスノーボーダーたちに支持されるSMOKINからシグネチャーモデルをリリースし、ソックスブランドのSUX SOXを自身で立ち上げるなど、シーンで活躍を続ける高尾 翔馬。そんな彼の生い立ちからスノーボードや仲間、家族についてを紐解く。

ーまずは子供の頃について教えていただきたいのですが、ご出身はどちらですか?

高尾 翔馬(以下T):生まれは大阪なんですよ。そこから中学校1年までは京都に近い枚方市というところにいましたね。家族はお互いにとても仲がよくて、両親からは「好きなことを続けろ」と言われて自由な方針で育てられ、学校でもめちゃくちゃ楽しく過ごしていた思い出があります。

ースノーボードを始めたのは大阪から北海道に移られてからということですか?

T:実はそれ以前にスノーボードとは出会っていて、小学校5年生の時に家族と一緒に北海道に行ったことがきっかけでハマっていったんですよ。それから本格的にスノーボードを取り組みたいと思い、中学校1年の冬休みに倶知安にある冒険家族という古い小学校を改装した民泊に住み込ませてもらい、手伝いをしながらプロスノーボーダーを目指しました。

ー1人で北海道に行ったんですよね。不安はありませんでしたか?

T:不安というよりも最初は慣れない環境で辛かったですね。移住先のニセコは当時とても田舎で、学校では本州からプロスノーボーダーになりたいってやつが珍しかったんですよ。しかも地元の奴らは小さい頃からウィンタースポーツに馴染んでいたから、自分よりもはるかにスキル面でレベルが上だったんですよね。なので余計にいじられの対象になっていった感じです。

ーそれでも諦めなかったんですよね?

T:絶対にプロになって帰ってくるって友達や家族に約束していたので、どんなに辛くても諦めようとは思いませんでした。そうやって最初の3ヶ月を奮闘していたら、自然と友達もできて、最終的に彼らとは今でも交流があるくらい親交が深まりましたね。

ーそんな中学校時代を過ごした後にカナダに移住されているそうですが、やはりそれもスノーボードが目的だったのでしょうか?

T:スノーボードと英語がどちらも学べるプログラムで留学をしたんですよ。向こうではホームステイをしながら大会にも参加して、それで夜は遊んでって感じでしたね。そこから19歳ぐらいの時に日本に戻ってきて、そこからは国内の大会に出まくっていました。

ーこれまで出た大会の中で印象に残っているものを教えてください。

T:色々とあるのですが1つ挙げるとすれば、2011年に六本木アリーナに100トンの雪を運んで開催されたBURTON RAIL DAYS presented by MINIが印象深いですね。大会前に、同い年のライバルは出場が決まっていたのですが、当時の僕はスポンサーの関係で選手としては出られないって言われていて・・・。それでも諦めずに、本番前日の公開練習だけ参加させてくれって頼み込んだらなんとかOKが出て、周りが練習している中で本気で滑ったんですよ。そうしたら昔から見ていた海外のトップレベルのスノーボーダーたちが、あいつも出そうよってなって、奇跡的に大会に出場することができたんですよね。

ー結果はどうでしたか?

T:本来は17人で行われるはずだった大会に謎の18人目として呼んでもらえて、しかも3000人以上のお客さんが見ている状況だったので、かなり楽しかったです。それで最終的に4位になって、そこから日本のスノボー業界に自分の名前が一気に広がっていきました。

ー高尾さんが現在手がけているブランドのSUX SOXはいつから始まったのでしょうか?

T:今年で7年目なので25歳の時ですね。プロスノーボーダーは自身がスポンサーされているメーカーに就職したり、インストラクターになったりするのが一般的な流れなんですが、自分はアパレルブランドをやってみようということでSUX SOXを立ち上げました。だけどTシャツやパーカーとかは周りでも作っている人が多かったし、プロ同士だとスポンサーの関係で着られないとかもあったので、あえて誰も手をつけていなかった靴下を作ったんですよね。とは言え、最初はやはり大変で、1,000足分の靴下在庫が家に段ボールで積み上がっている状態でしたよ。それでも、周りの支えもあってなんとか1年で売り切ることができました。

ー次は価値観についてお聞きしたいのですが、高尾さんにとって家族はどういう存在ですか?

T:原点だと思っています。めちゃくちゃ嫌なことがあったりしたら癒してもらえて、嬉しいことがあれば一緒に喜んでくれるチームみたいな存在ですね。もちろん奥さんも息子もとても愛していますし、感謝もしています。

ーお金との向き合い方についてもお聞きしたいです。

T:お金に好かれるためには、好きになりすぎないことが大事だと思っています。お金は追いかけると逃げていくんですよね。だから浮き沈みがある時も気にせず突き進んでいくことで、お金は後から勝手についてくるはずなんですよ。これはスノーボードが教えてくれたことで、どんなことでも続けることに意味があるのではないでしょうか。

ーちなみにスノーボードを辞めようと思ったことはありますか?

T:20歳前後の時期に大会でライバルに負けた時は辞めたいって思ってしまいましたね。彼が優勝して自分は3位だったんですけど、悔しすぎて相当落ち込みました。それでもスノーボードは人生の中でものすごく大切で、唯一何も考えずに熱中できるものなんですよ。

ー最後に生きる上で大切にしていることを教えてください。

T:まずはスノーボードで、生きる上で自分自身を保ってくれているような感覚です。あとは全国各地にいる仲間と遊ぶことだったり、家族と過ごす時間ですね。スノーボードと仲間、家族は自分にとって人生の軸になっていますよ。

(以上)

プロフィール

高尾 翔馬

スノーボードを11歳から始め、13歳で単身北海道へ。その後数々のコンペティションなどで好成績を残し、2015年にソックスブランドSUX SOXを自ら立ち上げる。

SUXSOX

プロスノーボーダーの高尾翔馬が2015年に立ち上げた 靴下ブランド【 SUXSOX
JAPAN MADE に拘り、製品のクオリティは高く、上質な履き心地はもちろん、斬新なデザインが多く、 ストリートシーンを中心にアーティストやアスリートにも多く支持されている。
近年ではアパレルも展開。【 SUKINAKOTODAKESURU 】をテーマに、 T-shirtやsweat、cap、buckethatなども展開している。