本当にやりたかったのはドレスを作ること

今までにない自由なスタイルのウェディングドレスを提案し販売するJYUNIのデザイナーである七原月乃は、自らの経験と周囲の環境をインスピレーションに制作を続ける。そんな彼女の半生とは。

ーまずはどんな子供時代を過ごしてきたか教えてください。

外で活発に遊ぶタイプのいわゆるわんぱくな子供時代でしたね。それと好奇心旺盛で、すぐ感化されるハッピー人間でした。


ー大学は同志社大学に通われていたとのことですが、そこでもダンスは続けなかったのですか?

ちょうど大学に入学したくらいのタイミングで、ふとダンスを本格的に続けていくより趣味として楽しみたいなと思った時があって。その気持ちと同時に、大学4年間はいろんなことに時間を費やしていろんな価値観に触れたいって思ったんです。なのでそれまでのようにダンスレッスンに通ったり、大学のダンスサークルに入ったりすることなく、友達とスタジオを借りて踊るくらいの程度で楽しんでいました。


ーなるほど。ちなみにどういった家庭環境でしたか?

家族構成は2個上の姉と私の2人姉妹で父と母の4人家族です。生活スタイルは少しだけ変わっていて、父がずっと東京で単身赴任ということもあり、普段は母が子育てをしてくれていました。それでも父は必ず週末には実家がある大阪に帰ってきてくれて、土日は決まって家族の時間を過ごしていましたね。毎週夏は海に行って冬はスキーに行ってみたいな。父と母はすごく仲がよくて、私と姉がいない今でも毎週二人で自然と戯れに行っています。

 

ー七原さんが今の職業を目指そうと思った経緯は?

ダンスを週4でやってたくらい本格的にやっていて、ダンスに携わる仕事もいいなって漠然と思っていましたが、その気持ちと同時にウェディング業界に携わる父の背中も見て育ったのでウェディング業界にも憧れがありました。就職活動をするにあたり改めてこれまでの人生でワクワクした記憶を辿ったときに、1番にフラッシュバックし映像が小学校4年生の時に行った親戚の結婚式の記憶で。当時ベールガールを務めた私のために、父がドレスをオリジナルで製作してくれたんですよね。そのドレスを着た時のウキウキワクワクした感覚と、幼いながらに”ドレスにはパアーがある”と思った感情を改めて思い出して、やっぱりウェディングに携わりたい、人生の晴れ舞台を飾るドレスを生み出す仕事がしたいという思いが明確になりました。


ー思いを現実にするまでに困難なことはありましたか?

ウェディング業界に絞り就職活動を行っていたのですが、私は服飾の専門学校に通っていたわけではなかったので、ドレスを生み出す職業ではなく結婚式をアシストする職業でしかこの業界に携わる手段はないように当時は感じていて。もどかしい気持ちがありながらも、業界を知るためにも一旦ウェディング業界の中で今の私が志望できる分野に就職しよう と思って就職活動をしていました。結果衣装室に内定をいただいたのですが、その後もドレスを生み出す方に携わりたいという気持ちが消えることはなく、業界を知ることに使おうとしていた時間を、服についての知識を深める時間に費やしたいという気持ちが大きくなって、葛藤の末内定を辞退しました。

ーお母さんはどんな反応をしていましたか?

母は服飾専門学校の先生をしているので、私が服飾をやりたいっていう気持ちの部分では母の影響も大きかったですね。なのでもちろん反対はされず、むしろ内定を辞退した後に洋服について教えていただける先生を紹介してくれました。そこで1年ほど学びに時間を費やしました。

 

 

ーそこからJYUNIというブランドをスタートさせたと?

そもそもウェディングドレスはほとんどがレンタルなので消耗品ではないんですよ。なので新しいものが市場になくても成り立つのですが、昨今は前撮りのフォトウェディングが人気だったりSNSの普及で写真に対する需要が上がっているので、衣装室を通さずに直接お客さんに売るウェディングドレスがあってもいいんじゃないかと思ったんですよね。そんな想いからパタンナーさんやテキスタイルデザイナーさんなどといった各分野のプロとチームになって、ブランドを立ち上げることになりました。

 

 

ーJYUNIのブランド名の由来についても教えてください。

数字の“12”と、もっと”自由に”というメッセージを掛け合わせてJYUNI(ジュウニ)っていうブランド名にしました。数字の12は、干支や星座、暦も12ヶ月だし、それに1年間で月が地球の周りを12回転しているとか、気づかないうちに生きるうえで深い意味を成している数字だなと感じて。そんな数字の12のように、誰かの人生において大きな意味をなすようなブランドになりたいとの思いからピックアップしています。また、もっと”自由に”ってことに関してはウェディングドレスの既存のイメージを変えていきたいと思っていまして、例えば白が基調であるとか、ドレスは女性だけのものでスーツは男性だけのものであるとかそういった固定概念を取り払って欲しいんですよね。もっとラフにファッションを楽しむ感覚でドレスを着てもらいたいし、性別とかも超越するような多様性も意識しています。

 

 

ー多様性を意識するのは周りにそういった人が実際にいたからでしょうか?

身近にいたからそうしたってことではないんですけど、実際にローンチしてみたら実は私はセクシュアルマイノリティだったんだっていうDMが来たりして、知らなかったけどやっぱりいるんだと気づかされました。サイズや性別から着たいという気持ちを制限しないために、JYUNIはフリーサイズでユニセックスで展開しています。それと、本来ウェディングドレスって1着もしくは決められた組み合わせで完結すると思うんですけど、JYUNIは“自由”に組み合わせれるんですよ。私物を混ぜてもいいし、着る人のエッセンスや個性が入ってもいいです。もはやそれを望んでます。そのためにあえてスキを作ることも意識しながらデザインし、もっと”自由に”というメッセージを表現しています。

 

 

ーそうやってブランドをやっていくなかで課題や失敗はありますか?

ウェディングドレスとしてはニッチなことを打ち出しているからこそ、関心を持っていただける発信をすることが一つの課題です。世間の需要と、自分たちの思いとのバランス感覚が大事だなと感じています。ドレス作りに関して言うと、頭の中のイメージをどこまで表現できるかということと戦っています。理想とリアルのギャップをなくすことはもちろん、理想を上回るよう仕上げ、お客様ものとに届けることが課題です。

 

 

ーちなみに仕事をするうえで大切にしている習慣があれば教えてください。

ちょっと照れくさい話なんですけど、私がデザインしたドレスは我が子だと思っているので、慈しんで愛情を注ぐようにしています。だからこそ毎日状態をチェックするし、ケアも怠りません。あとは遊び心を忘れないということも大切にしています。ワクワクすることは仕事面でもプライベートでも欠かさないように生きていますね。

ーコロナが大流行してからそういった価値観に変化はありましたか?

基本的な価値観に変化はなかったのですが、より必要なものと不必要なものが明確になった気がしています。もちろんウェディング業界としては危機的な状況なのですが、私個人としては前向きにとらえて、こういったなかで何ができるかを常日頃から考えるようにしています。

 

 

ーSNSとはどうやって向き合っていますか?

インスピレーションを受けるツールであり、刺激や共感が詰まっている空間であり、うまく使えば無限の可能性があるなと感じています。すぐ情報収集できて便利だからこそ頼りにしすぎてしまっていた自分がいたのですが、最近はsns内ばかりにらめっこせず、直接目で見て手で触れて体感することも大切にしています。バランスが大事ですね。

 
 

 

ーありがとうございます。最後に1年後と3年後、5年後のビジョンについて教えてください。

1年後は私自身25歳になるので、友達もどんどん結婚していくのかなと思っていて、友達とか関わりある方の人生の門出にJYUNIが何かしらの形でお供できたら嬉しいです。3年後にはトラックを試着室に改装して全国を駆け巡る移動試着室みたいなことを実現したいと思っています。5年後には全国区に名を轟かせられていることが目標です。

 

プロフィール

七原月乃(ななはら・つきの)

2018年に同志社大学ミスキャンパス準グランプリを獲得し、SNSを中心に若い世代から注目されるアイコン的存在。現在は、“もっとジユウニ、もっと遊び心をもって”というテーマを掲げて立ち上げられたウェディングドレスブランドのJYUNIのデザイナーとして活動し、自らの経験や周囲の環境からインスピレーションを得て制作する自由なスタイルのウェディングドレスを提案する。

もっとJYUNI(ジユウニ)
このブランドの唯一のルールは自由であること
長い月日の中で築き上げられたブライダルに対する固定概念を覆し、新しいフィールドを創りあげることをモットーにしています
もっと自由に、もっと遊び心をもって
思うままに着こなした先にある2人だけの特別感を
JYUNI